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『ひとり工房』
 
ケンウッドのピュアオーディオの最高峰として、徹底的に音にこだわり開発されたR-K801-N。
音楽関係の各出版社からも数々の賞を受賞し、高い評価をいただいている。

他のピュアオーディオはすべて海外の工場で生産されている中、このR-K801-Nは山形ケンウッドで生産されている。
しかも通常のラインとは違い、たったひとりで組み立てをしている。
『ひとり工房』と呼ばれるその作業はどのようなものだろうか。
雪の山形に飛んだ。


山形県鶴岡市。
国内有数の米どころ・庄内平野に囲まれた豊かな土地でR-K801-Nは生産されている。
積雪で看板が隠れてしまうほどの大雪の中、山形ケンウッドに足を踏み入れる。
 
部品検査
まず始めに部品検査を行う。
ここでは、入ってきた部品の品質をチェックしている。

部品に傷・汚れなどがないか穴が空くほど見る。斜めにかざしたり、いろいろな角度からも眺める。検査合格の基準はマニュアルによって制定されており、その基準は非常に厳しい。

Made in Japanに誇りを持ち、 ひとつの傷も見落とさないよう、日々検査を行っている。
部品検査
フロントパネルに傷・汚れ等がないか入念にチェック。非常に神経を使う。
 
24時間フル稼働の実装マシン
次の工程は実装。
ここでは基盤に、抵抗やコンデンサ等の小さな部品を実装マシンで装着する。
この実装マシンは24時間365日フル稼働している。
実装マシン
5列並んだ実装マシン。
ここは24時間フル稼働している。
まず、クリーム半田をスキージで均一に塗り、高速マウンターで部品を配置していく。その後リフロー炉で加熱し、クリーム半田を溶かして基盤と部品を接合していく。
浮き、ズレ、色味などに異常がないか小型カメラで検査し、さらに拡大レンズを用いてすべて人の目で検査する。その後、熱に弱い部品、大きな部品は人の手で半田付けする。
 
グリーン企業としての使命
R-K801-Nでは、鉛フリー半田を使用している。

通常、実装基板のほとんどは廃棄粉砕され、埋立て処理されている。その際、半田に含まれる鉛が、大気汚染によって発生する酸性雨にさらされて有毒の化合物となり、水を汚染する原因となる。このことから、鉛を含まない半田、すなわち鉛フリー半田を早急に使用することが全世界で叫ばれている。

鉛フリー半田は通常の半田と色が違うため、すべて人の目で検査する必要がある。また、通常の半田と融点が違い、デリケートなため、リフロー炉の温度設定には特に気を使う。

このように、通常の半田より細かな気遣いが必要だが、鉛フリー半田の使用は、グリーン製品をつくる私たちの重要な使命だ。
鉛フリー半田
半田ごてを使い、人の手で部品を付けるときも通常の半田より付けにくい。高い技術力が必要になる。
 
たったひとりの作業
次はいよいよ『ひとり工房』の作業場に入る。

ここでは、本体の組み立てから実働検査、梱包までをすべてひとりでこなす。
まず、天板のカバーをかぶせる前の段階まで組み立てていく。手際よく本体が組み立てられていく。
初日は一台組み立てるのに一時間以上かかったというが、現在のピッチは組み立て完了まで22分/台。高度な技術力がないと、この速さで作業することは不可能だ。

作業者たちは以前まで高度な技術力を要する計測器のラインで仕事をしていた。それに比べれば今の作業は簡単で楽しいという。
組み立て作業
【組み立て作業】
部品はすべて手の届く位置にあり、それを順番に取りながら組み立てていく。
 
インライン方式の実働検査
次に、実働検査である。通常、実働検査は、製品を組み立て、梱包した後で検査をする。しかし、それでは効率が悪い。
そこで、一部現場で検査できるものについてはインライン方式をとることにした。

インライン方式とは、現場の作業者が品質保証部の教育を受け、検査の方法・基準を一通り学び、それに合格した者がラインの中で検査する方法である。

インライン方式にすることで、手間が省けるだけでなく不良の早期発見にも繋がる。また、自分が組み立てた製品を自分で検査することによって、もし不具合が出ても組み立てのどの工程が悪かったのかが自分で理解でき、モチベーションのアップにも繋がっているという。
実働検査
【実働検査】
インライン方式にすることにより効率だけでなくモチベーションも上がった。
 
梱包までが仕事
ここまでのすべての試験に合格したものだけが梱包される。リモコン、取扱説明書などの付属品と一緒に本体を個装箱に入れる。

組み立てから検査、そして梱包までのすべての作業をたったひとりで行う、それが『ひとり工房』の作業形態だ。
梱包作業
【梱包作業】
ここですべての付属品を入れて箱詰めする。
 
身近な製品をつくるのは楽しい
実際に作業をしている方に感想を聞いてみた。
以前は公共安全機関や民間企業向けの製品をつくっており、自分のつくった製品を街で見かけることはなかった。しかし、今は自分のつくった製品を家電量販店などで見かけることができるので非常に楽しいという。それは、『ひとり工房』主任の高橋も同じだ。

また、作業をする際にST(標準時間)を定めており、それが短縮していくとうれしいし、やる気にも繋がるという。しかし、 通常のライン作業とは違い、どこかの工程でつまづくと、その後のすべての工程もうまくいかなくなる。逆に、調子に乗れたらスムーズに作業が進み、時間短縮にも繋がる。
指導風景
常に作業者を気遣い、コミュニケーションをとっている。「よいところを見つけて褒める」というのが高橋の指導方針。
 
進化する工場
山形ケンウッド社長・佐藤に、『ひとり工房』について尋ねると、「まだまだ未完成」という言葉が返ってきた。この言葉は『ひとり工房』だけではなく、工場全体のことも指している。

ここ、山形ケンウッドでは、毎日さまざまな変化がみられる。その中でも一番大きな変化は作業指示書だろう。

作業指示書というのは、作業する項目・手順を明確に記したものであり、工程別に作業者がいつも見えるところに貼ってある。以前は紙の作業指示書だった。

しかし今は違う。
媒体が紙からモニターになっただけでなく、表示の仕方が3D画像になった。しかも様々な角度から製品が見られるよう、この3D画像が動く。

人間はやはり文章を読むよりも画で見たほうが理解しやすいもの。「読む指示書」から「見る指示書」へ進化したことで、作業者はより作業がしやすくいなったという。


作業指示書
「読む指示書」から「見る指示書」へ。
他のラインもほとんどすべての工程においてこのモニターが設置されている。
最後に、これからどんな工場にしたいか聞いた。

「今まで山形ケンウッドはいろいろな製品をつくってきました。一般ユーザが使用するものから業務用のみの使用のものまで、こんなに多種多様なものをつくったことのある工場は他を探してもなかなかないと思います。そのノウハウを活かし、どんな製品の注文依頼が来ても対応できるようにしていきたい。『何でも作れる工場』にしたいですね。」

佐藤の工場にかける思いは熱い。
社長はじめ従業員の熱い思いの中でR-K801-Nは生産されている。
そして、工場は日々進化している。
山形ケンウッド社長・佐藤
『何でもつくれる工場』にすることが目標。困った時に助けてあげられるよう様々なノウハウ、技術力をつけていきたい、と佐藤。
 
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